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TVアニメ『キリングバイツ』12週連続インタビュー
第3回(2) キツネツキ 菅原卓郎・滝 善充(EDテーマ担当)

――原作漫画『キリングバイツ』をお読みになられての感想はいかがでしたか?

菅原 『キリングバイツ』は凄く今の時代の漫画ですね。大ゴマで「ラーテルとはこういう生き物なのだ」という説明があり、そこから戦闘シーンに入る構成が印象的で、単なるバトル漫画ではなく、現代だからこそ起こり得る要素が多分に含まれていると思いました。僕がラーテルを知ったきっかけはあるTVの教育番組で、凄いマイナーな生き物だなと思っていたら『キリングバイツ』では強い主人公でした(笑)。そんな色々な印象を受けて「ラーテルって動物、良いな」と思うようになりました。

 7巻まで一息で読めるくらいノリが良くて、戦いの中での逆転劇にワクワクしながら純粋に漫画を楽しみました。一番心が踊ったところはヒトミたちが炎蹄島(ほていじま)に上陸して、「獣獄刹(デストロイヤル)」が始まるところです! 僕は「ラーテル」が一番好きなのですが、この漫画を読んで初めてこの動物を知りました(笑)。他には「ゴリラ」が好きですね。人間の姿の時はメガネをかけた小柄な少年でしたが、イメージが激しく変化します。強い動物になれてよかったなと思いました。あとは後半に出てくる、フェロモンで他人を惑わせる「シベット」が戦略的に面白くて好きですね。

――原作の印象を受けて、「ケダモノダモノ」はどのようなイメージで作られましたか?

 『キリングバイツ』は戦う漫画ということでアップテンポな曲に仕上げました。最初は多少シリアスな感じにしようと思っていたのですが、時々コミカルな要素もあるので、曲中にもシリアスな部分とコミカルな部分、ヘビーな部分とポップな部分をバランスよく入れられたらいいなと思って作りました。曲全体の中で、異なる要素へ行ったり来たりするイメージです。一曲を通して様々な展開を表現してみました。あとキツネツキはふたりなので、ふたりで再現可能な演奏の限界も目指して頑張りました!

――歌詞はどのようなイメージで書かれましたか?

菅原 まず最初にタイトルの「ケダモノダモノ」が思い付きました。相田みつをさんの「にんげんだもの」がきっかけにあり、『キリングバイツ』は獣だよな…ケモノ、ケダモノ…「ケダモノダモノ」のように語呂が良いのと、キツネツキというバンドにはそのくらいの冗談っぽさを出したいという想いがありました。歌詞は「あの子は人間に見えるけれど、その本性はケダモノだ!」といった『キリングバイツ』の世界に寄せつつ、現実世界でもあり得ることを書いています。最後の「あの子はケダモノだもの、だからしょうがないよ」というオチから作ったという感じですね(笑)。

――今作で特に注目して欲しい「聴きどころ」を教えて下さい。

菅原 歌詞から言うと、まずは言葉を重ねながらサビの「ケダモノダモノ」へと向かっていく流れに注目して欲しいです。そして獣闘士(ブルート)とは別の意味で、「あいつは本当に酷い男だから、絶対に近づいちゃダメだぞ」みたいなケダモノみたいな人っていますよね(笑)。そのように自分の普段の生活と重ね合わせることができる歌詞になっていると思います。

 僕は9mm Parabellum Bullet(以下、「9mm」)ではギターを弾いていますが、この曲ではドラムを叩いています(笑)。その点を気にして聴いてもらえるとまた違った楽しみ方ができると思います。キツネツキは「好きなようにやろうぜ」と言って始めた緩いバンドなので、僕も好きなドラムをやらせてもらいました。高校生の時からドラムも叩いていたので、今回楽曲として聴いてもらうことができて嬉しいですね。

――今作で新たに挑戦したことがあれば教えて下さい。

 まさにドラムです(笑)。過去にもちょこちょこ叩いた作品があったり、ライブで叩いたり、炭酸飲料水のCM楽曲などで演奏していたんですよ。

菅原 キツネツキは僕と滝のふたり編成のバンドですが、今回の「ケダモノダモノ」はアニメのテーマソングにもなるので贅沢に演奏しようと思い、アルカラの下上貴弘さんにベースで参加してもらいました。キツネツキはライブでよくゲストを呼ぶのですが、こういった意味ではゲストの方こそ挑戦かも知れませんね。「遠慮せず来てください」とゲストを迎えるスタンスはキツネツキならではだと思います。そして僕たちは一回ライブに参加してくれた人は勝手にキツネツキのメンバーだと認識して、隙あらばすぐに呼びます(笑)。神戸のフェスでは、音楽業界で有名なカメラマンの橋本塁さんにベースに挑戦してもらいました。

――9mmから派生したキツネツキだからこその新たな発見はありましたか?

 最初は卓郎が歌うのでどうやっても9mmみたいになってしまうのではないかと心配していました。でも終わってみたら9mmでやっていたこととは全く異なり、キツネツキの独特の空気が出せたので自信がつきました!

菅原 9mmとの差別化は特に意識せず、「難しいことはしなくて良いよね?」という程度しか話していませんでした。本当に何が違うかと言ったら、楽曲の中で成立させようとしている世界のシリアスさですかね。9mmは崖から落ちるギリギリの場面を切り取ったり、崖から落ちている最中の描写などをハードなイメージで描いています。逆にキツネツキは崖から落ちてもタンコブで済むくらいの、ギャグ漫画のような緩く優しげなイメージです。

――キツネツキとして、目指しているものがあればお聞かせ下さい。

菅原 特にないですね(笑)。本当にないというか、気楽にやっていこうというバンドなので、逆に言えばマイペースを貫くことが目標なのかもしれないです。しかしマイペースと思いきやアニメのテーマソングといった大きな話がやってきて、この先どうなるのか若干の不安はありますね(笑)。またよく冗談で言っているのですが、曲のたびにどんどんゲストミュージシャンを入れていって、最終的にふたりとも楽器を持たず、歌だけでライブをするのが目標です!

 ステージに15人くらいゲストを集めて、僕と卓郎は本当に何もしないで「ありがとー!」とか「イェーイ!」とかしか言わない感じが良いです(笑)。一度やりたいですね。

――ファンへメッセージをお願いします。

菅原 9mmからご存知の方も、アニメ『キリングバイツ』から「ケダモノダモノ」を知った方も、原作の空気や現実との距離感を踏まえて聴いてもらえると、自分の想像力が色々と喚起されて面白いのではないかと思います。言葉の上だけや音だけではなく、漫画や身の回りのことと重ね合わせて楽しんでもらえたら幸いです。またキツネツキのライブは本当に緩い温度感なので、ライブに興味がある方には入門編に最適かもしれません。9mmより入りやすく、とても平和で良い感じです!

 9mmから「ケダモノダモノ」を聞いた方には表現の違いや、良いところでの軽やかさを楽しんでもらいたいです。そしてせっかくのエンディングテーマなので、多くの方に曲を覚えてもらえたら嬉しいです。歩いているときにフッとサビのメロディを口ずさむくらいの存在になれたら、僕はもう本当に満足です。しっかり『キリングバイツ』に寄せて考えて作ったので、アニメと一緒に楽しんで欲しいと思います!

――ありがとうございました。